昔の町並みがそのまま現存する場所で、ときどき使われる「まるでタイムスリップしたかのような」という表現。
当時の面影を現代に感じられるという意味では間違ってないし、言いたいこと、分かるよ。
そもそも「タイムスリップしたかのような」って、どうゆうの?
少女の頃に見たSF映画の残像のせいか、空は薄紫からセピアに変わり、ぐにゃりと空間が歪んで見えて・・・私にとってはそんなイメージ。
そんな光景を目の当たりにしたわけじゃないのに、「タイムスリップ」というフレーズが浮かんだのは、12月でいちばんの寒波が訪れていたとある週末、初めてプライベートで鞆の浦を訪ねた日のことでした。
「対潮楼」に立ち寄り、狭い路地を抜け、開けた視界の先の鞆港は、波は穏やかなものの雪を降らせる雲のせいで空に押しつぶされそう。
私が生まれ育った町とはまったく似てないのに、ここへ来るのはまだ二度目なのに、物心つく前まで暮らしていたのかもという錯覚に陥ってしまって、だから「タイムスリップ」なんてベタなフレーズが頭の中を支配したんでしょうね。
この懐かしさの理由を突き詰めることはせず、少し落ち着ける場所へ。
常夜燈と赤い郵便ポストのあいだにある「鞆の浦 @ cafe」は、100年以上も前の長屋を改築しているお店。
かつての名残を感じさせる店内には、オリエンタルな雰囲気が魅力の店長さん。
キッチンから漂う炒めたニンニクの匂い、ずらりと並ぶリキュールの瓶、大きなガラスの蒸し器にはオリーブかと思いきやお正月用のクワイ。
絶妙なアンバランスさが、私にはしっくり来る。
このまま夜までいたら、ずるずる居着いてしまいそう。
鞆の浦って、不思議な町です。
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鞆の浦 @ cafe
住所:福山市鞆長844-3
Tel:084-982-0131
営業時間:11:00-20:00
定休日:水曜日